3月22日、学びの場における子ども若者の孤立解消と育成事業成果報告会(休眠預金等活用事業2021年度通常枠)を開催しました。会場の久留米シティプラザ大会議室と、オンラインから129名様に駆けつけて頂きました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
本事業は、一般財団法人ちくご川コミュニティ財団(資金分配団体)と、福岡県内でフリースクールを運営する3団体(実行団体)の一般社団法人家庭教育研究機構、認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZA、NPO法人未来学舎が、2022年から休眠預金等を活用して学校に行けない・行かない子ども(不登校の子ども)を支援する居場所づくりに取り組んだものです。
オープニングは、ちくご川コミュニティ財団理事長の宮原信孝よりご挨拶。
まずは、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)より、本事業担当プログラムオフィサーの阪上英祐さんにご登壇いただきました。
休眠預金の制度を活用した本事業は、制度の全体の管理・運営を行う指定活用団体の日本民間公益活動連携機構(JANPIA)、実行団体への助成や非資金的伴走支援など中間支援を担う資金分配団体のちくご川コミュニティ財団、現場で実際に対象者への支援を実施する実行団体の3者が並列なパートナーとして事業運営を行います。
(休眠預金等活用事業の詳細はこちらのページから)
続いて、ちくご川コミュニティ財団プログラムオフィサーで事業部長の庄田清人が、本事業の全体像について説明します。
本事業は、学校に居場所がない子ども(不登校の子ども)とその家庭を対象に、福岡県内や隣県の学校や行政、不登校の親の会など幅広いステークホルダーに働きかけながら取り組みました。
事業開始当時、全国の不登校児童生徒の数は増加傾向で約20万人(2023年度で34万人/文部科学省)。
地域の持続可能性の観点から考えると、重要かつ緊急性が高い社会課題と考えました。 この事業で、子どもたちが自分に合った学びの場を選択できる地域社会を目指しました。
1,000人あたりの不登校児童数は福岡県23.3人、大分県22.6人と、筑後川関係地域は全国平均の20.5人を上回る実態があります(文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(令和2年度)」)。
学校以外の居場所の選択肢の一つに、民間団体が運営する「フリースクール」があります。
フリースクール利用を希望する子どもが多い中、フリースクールとしても人材育成や財源確保、地域や学校との連携構築などさまざまな課題を抱えています。さらに、経済的困難からフリースクールの利用ができない子どもと家庭の孤立を防ぐための支援も必要です。
こうした課題を解決する道筋をロジックモデルに落とし込み、3年間の事業終了後の中期・長期アウトカムを設定。
一緒に事業運営する「実行団体」が公募で3団体、選定されました。
3実行団体の発表です。最初は、一般社団法人家庭教育研究機構。福岡県飯塚市で不登校や不登校傾向の小中学生向けに「フリースクールみんなのおうち」の運営や、家庭からの相談事業などを実施しています。本事業では「いろとりどりの居場所と繋がる支援事業」をテーマに活動しました。
・人材確保が難しい中、23回のスタッフ研修で人材育成と定着ができた
・ピアサポーターとして卒業生の保護者の力を借りて居場所支援が充実した
・フリースクールに通う子どもたち自身が、いろんな壁を越えて自由になっていった。憧れだった「修学旅行」のためのクラウドファンディングに挑戦した
・社協の秋祭りで、地域の小中学校の作品と並んでフリースクールみんなのおうちの作品を展示してもらたことで、多様な学びの場が地域に受け入れられていると感じるようになった
など、団体としての成長や地域の学校や家庭へアプローチを積み重ねた成果について報告しました。
また、九州で初めて校内フリースクールを実現。2022年11月より、福岡県飯塚市教育委員会から委嘱される形で、同市立筑穂中学校にて校内フリースクールを運営しています。
家庭教育研究機構との連携を担当した、筑豊中学校の芝田博志先生も登壇。
「研修会を一緒にやっていく中で、お互いの距離がなくなっていった。担任が校内フリースクールの部屋に入って生徒やフリースクール職員とコミュニケーションを取ったり、フリースクール職員が職員室に入って校内フリースクール利用生徒に渡すプリントを取りに来るなど、不登校の生徒への対応スピードが早くなった」と振り返りました。
最後に、家庭教育研究機構代表理事の芳野仁子さんは「飯塚市のグランドデザインになった。課題は色々残っているので、ここでいただいた力を活用して続けていきたい」と締めくくりました。
続いて、NPO法人未来学舎です。福岡県久留米市でフリースクール、通信制高校サポート校、カフェを運営し、不登校の小中学生と高校生及びその保護者へ支援を実施しています。本事業では「子ども・若者に対する普通教育機会保障事業」をテーマに取り組みました。
・在籍校(フリースクールを利用する生徒が籍を置く小中学校)の関係者や地元住民と一緒にお祭りを開催するなど、未来学舎も地域の一員として活動できた
・フルースクール利用者の子どもたちの自己肯定感も高まり、アンケート調査では事業終了時の2024年度には「自分が好きと思えるようになった」という回答が100%に到達した
・未来学舎の子どもたちの特徴は「自由で主体的に行動する」「地域との交流を大切にする」と第三者へのヒアリングで評価された
など、フリースクールの子どもたちの変化や地域との関わりの成果について報告しました。
また、フリースクール利用の保護者や、活動を見守る自治体、教員へのインタビュー動画も紹介。
「子どもがやりたいと思うことを全力で周りの大人が応援してくれる」「第二の家のよう」「子どもたちが自分から人との関わりを作ろうという姿勢がある」「未来学舎の子どもたちが不登校のイメージを変えてくれた」などといったコメントが寄せられました。
フリースクールは、必ずしも居住地にあるとは限りません。子どもたち自身が日々生活する、慣れ親しんだ地域に自分らしい学びが選べる環境が保障されているとは言い難い実情があります。
最後に、未来学舎代表理事の中島靖博さんは「通学圏内の公教育の中にこそ、多様な学びを存在させる必要がある」と提言しました。
最後は、認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZA(えすぺらんさ)です。福岡県福岡市東区で不登校の小中学生、高校生を対象に2005年からフリースクールを運営しています。本事業では、「不登校でも安心できる社会づくり事業」をテーマに活動しました。
・フリースクールなど民間教育施設を利用する家庭への公的家計支援を考える「調査研究部会」の立ち上げと運営(不登校親の会など7団体、弁護士、新聞記者などの有識者で構成)
・60自治体へのアンケート調査
・福岡県内の首長訪問と懇談会
・福岡市議会議委員向け学習会の開催
など、長年のフリースクール運営経験を活かした行政や社会へのアドボカシー活動の成果を報告しました。
調査研究部会の運営はちくご川コミュニティ財団も携わっており、事業終了後も継続します。
また、首長訪問や部会の活動、後述するちくご川コミュニティ財団の「子どもの多様な学びの場を保障する基金」(愛称:たまきちゃん)による奨学金事業開始を受けて、2024年に福岡県大野城市が同県内で初めて、家庭への公的支援を導入。その後も、公的支援を導入する自治体が相次ぎました。
続いては、資金分配団体のちくご川コミュニティ財団による発表です。
参加者の皆様からは、会場、オンラインともにたくさんのご質問やご感想もいただきました。
会場には、資金分配団体と各実行団体の展示コーナーも。
キッズスペースには、九州ダンボール様より貸し出しいただいた、段ボール遊具で子どもたちが元気に遊びます。
プログラム後半では、ちくご川コミュニティ財団のファシリテーションのもと、3団体とディスカッション。3年間の事業をふりかえりました。
ここで、JANPIAの阪上さんにもう一度ご登壇いただきます。4団体による事業運営について、総括をいただきました。
最後は、評価アドバイザーで久留米大学教授の中村寛樹先生より講評をいただきました。
報告会終了後は全員で写真撮影。(写真撮影:有限会社印象派 様)
全国的に不登校児童生徒が増加している状況の中で、学校外の学びの場の必要性がますます高まっています。フリースクールの運営には人材・財源の確保や地域との連携など、多くの課題があります。
本事業を通じて、子どもたちが自分に合った学びの場を選択できる地域社会の実現に向けた第一歩を踏み出すことができました。皆さま、事業運営お疲れ様でした!
本事業の詳細なアウトカム等の報告は、来年度JANPIAウェブサイトより「事業報告書」という形で公開される予定です
3月31日に総額116万円を集めて完走したクラウドファンディングを基に、今後発行予定の「たまきちゃん白書」には、本事業で得られた知見も盛り込まれます。この白書は、不登校に対する理解を深め、地域社会における具体的な行動の広がりを目指す取り組みです。
▶【ご報告と御礼】たまきちゃん白書クラウドファンディング
また2024年度からは、ちくご川コミュニティ財団と本事業の実行団体である一般社団法人家庭教育研究機構が「ふくおか共育コンソーシアム」を結成し、休眠預金等活用事業(草の根活動支援事業・通常枠)の資金分配団体として新たに採択されました。6月13日まで実行団体を公募しています。
▶「ひとりひとりに合った多様な学びを支える地域共生事業」実行団体公募について
最後に、本事業へ関心をお寄せいただいた方々、行政や企業の皆さま、改めて御礼申し上げます。
今後も、子ども・若者の孤立を防ぎ、一人ひとりが自分らしく生きることができる地域づくりに貢献してまいります。
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